2005/10/09〜
[3012] 昴  投稿者:陀菩酢  投稿日:2005/10/09(日) 07:51:11 [返信] 世界を驚かせたトヨタ自動車(7203)による富士重工業(7270)の株式取得は、トヨタ、ゼネラル・モーターズ(GM)、富士重の三社がいずれも得をする「三方一両得」の構図となった。トヨタが取得しない約九千万株について、GMが三日間に分けて売却するという特殊な手法を採用した結果だ。もっとも初日の六日に富士重は取得に失敗。この約二千七百万株を誰が手中にしたのか、いまだにわかっていない。(川崎健)  今回のトヨタによる富士重株取得は、六月上旬にGMのリチャード・ワゴナー会長が富士重の竹中恭二社長に売却の意思を伝えたことが発端だとされる。  GMの経営の不振は日を追って深刻化、富士重は一日でも早く自社の株式の引受先を見付ける必要に迫られていた。GM保有分(約二〇・一%)のうち、トヨタ取得分が八・七%にとどまったのは、公正取引委員会に事前届け出が必要のない水準に抑えるため。そこでトヨタが取得した残りは富士重自身が受け皿になるという複雑なスキームになった。  トヨタの六日の取得価格は一株五百二十円と、五日終値よりも二十円安い。その後、富士重株は急騰したため、トヨタは七日終値と比べると一株あたり九十四円、総額で約六十四億円も安く購入できた計算だ。  ではGMは損をしたのかというと、ちょっと違う。トヨタ取得分以外のを買い受ける富士重の自社株買いを、わざわざ三日間に分けたことが幸いした。  自社株買いは、東京証券取引所の「ToSTNeT―2」と呼ばれる時間外取引システムを活用、午前八時四十五分に前日終値で取引する。大株主の売却を自社株買いで受ける場合、通常は一度で処理するが、今回は「GMの意向で三日間に分けた」(富士重関係者)。  GMは一日目の六日は前日終値の五百四十円で売却したが、二日目はトヨタと富士重の提携が発表された後の市場価格で売却できた。つまりトヨタによる信用補完を一部織り込んだ株価で富士重株を売れる利点がある。結果、一度で売却するよりも、GMは総額で八十億円程度高く富士重株を処分できた。 -------------------------------------------------------------------------------- 続 昴 投稿者:陀菩酢  投稿日:2005/10/09(日) 07:53:06 GMは五日、米証券取引委員会(SEC)に提出した資料で、今回の富士重株売却で七億―八億ドルの損失が出ることを明らかにした。逆算すると、GMの富士重株の簿価は一株あたり千円強とみられる。少しでも多くのリストラ資金を捻出(ねんしゅつ)し、売却損も抑えたいGMにとって、異例の「三日間ばら売り方式」は大成功だった。  すると、富士重はGMから高い値段で自社株を引き受けさせられたことになるが、六日に自社株買いに失敗するという予想外のハプニングが富士重を救った。  寄り付き前のToSTNeT―2は午前八時二十分から注文を受け付け、先着順に注文を成立させる。富士重はみずほ証券に委託し、午前八時二十分ちょうどに注文を出したが、「一秒未満のタッチの差」(富士重)で他の投資家に売却株を奪われてしまった。 急騰見越し動く  財務的な余裕が乏しい富士重にとって、自社株買いの負担は重い。三月末に千三百億円弱の手元流動性を抱えるが、「取得資金の一部は借り入れも利用しなければならない」(竹中社長)状況だった。初日の自社株取得失敗は、図らずも富士重の資金負担を軽くするメリットをもたらした。  気になるのは、誰が「油揚げ」をさらったのかだ。今のところ不明で、富士重自身も特定できていない。ネット専業証券はToSTNeT―2の注文を扱っていないうえ、大手証券でも「個人の利用例はほとんどない」(野村証券)以上、個人の可能性は低い。兜町では、目ざといヘッジファンドが富士重株の急騰を見越して動いたとの見方がもっぱらだ。  買収ファンドや企業統治にうるさい投資家などの可能性も消えない。富士重にとって、大量保有報告書から目を離せない日々が続きそうだ。 -------------------------------------------------------------------------------- 11日 投稿者:陀菩酢  投稿日:2005/10/09(日) 07:57:17 ◆…十一日の株式市場では、午後二時発表の八月の機械受注が注目点だ。市場予測の平均値は前月比プラス二・五%。前回調査がマイナス四・三%で、市場には「今回はその反動増があると見て、事前予測を上回るとの期待もある」(大和証券SMBC)。ただ、週末の七日にかけ相場の調整色が強まっている局面だけに、予測を下回るようなら慎重論を一段と台頭させる可能性がある。  ◆…米国株式相場の先行きに不透明感が漂うなかで、物色の方向感が探りにくくなっている。七日はエス・サイエンスやシルバー精工など超低位株が東証一部の売買高上位に並び、個人投資家が目先、主力銘柄から短期の値幅取りに乗り換えた面もある。相場全体に下げ止まり感が出ないと、個別銘柄の散発的な物色への比重が高まる。  ◆…徐々に水準が落ちてきた東証一部の売買代金、売買高が再度、盛り上がるかも注目点。下げ局面での取引減は売り惜しみも反映するが、押し目買いの鈍さを気にする市場関係者は多い。 -------------------------------------------------------------------------------- 壱 投稿者:陀菩酢  投稿日:2005/10/09(日) 08:00:45 政府と日銀が八月上旬に「景気の踊り場脱却」を宣言してから今週の初めまで、ほぼ一本調子に上昇してきた日経平均株価。米国株市場がインフレと、景気失速をともに懸念する難問を抱えて調整色を漂わせていることもあって、七日まで約三カ月ぶりに三日続落した。 □ ■ □  約二カ月間の上昇幅二〇〇〇円に対し、この三日の調整幅は五〇〇円余り。「ここまでの上昇が急だった反動が出ている。しばらくは日柄調整が続くかもしれない」(東海東京調査センターの隅谷俊夫シニアストラテジスト)。市場ではこんな声も聞こえ始めた。日経平均が今年の安値を付けた五月中旬以降、二割強上昇したのに対して、米国のニューヨークダウ工業株三十種平均は横ばい。世界の主要市場のなかで日本株の動きが良かったことが、かえって投資家を惑わせる面もある。  そんな局面だから、現在の日本株の水準が割高なのか、まだ買えるのかを巡る議論がにわかに活発になっている。端的には「日本株は米国株などよりPER(株価収益率)が高くても良いのか」という議論だ。  来期(二〇〇六年度)の予想ベースに基づく、東証第一部の平均PERは現時点で約十六・七倍。一方の米国のS&P五〇〇種は約十四倍にとどまる。二〇〇二年半ばからほぼ同水準で推移してきたPERは、ここにきて日本株が米国株を三ポイント近く上回る。格差は三年ぶりの高水準だ。この状況を前に、証券各社のストラテジストの見方は割れている。 -------------------------------------------------------------------------------- 弐 投稿者:陀菩酢  投稿日:2005/10/09(日) 08:03:14 足元のPER格差を、日本株が実力以上に評価されているためとみる「割高論者」。早晩、日本株の独歩高は修正されるとみる彼らはこう主張する。  「日本では新発十年物国債利回りが一・五%台と先進国の中で低く、その分株式の魅力が高まるとの指摘もあるが、これは日本株投資の主体が外国人であることを考慮していない。外国人が比較対象にするのは、米国など海外の金利水準であり、その意味で株式益利回り(一株当たり利益の株価に対する比率)が五%台にとどまる日本株が割安とは言えない」  割高論者の一人である日興シティグループ証券の藤田勉・日本株ストラテジストは、夏場以降の外国人による大量の日本株買いには「いくつかの誤解が含まれる」とも話す。衆院選で自民党が圧勝し、小泉純一郎首相が主導する構造改革が進むとの期待はあるが、外国人は郵政民営化の先に待つ最大の改革が日本経済に水を差しかねない「大増税」ということを見落としているという。  これに対し、現在の日本株のPERを妥当とする「容認論者」は、日本企業の収益拡大の持続性に注目する。調査機関などによる来期の予想増益率(純利益ベース)は、日米ともに一一%前後。しかし米国では金融関連や原油高の恩恵を受けるエネルギー企業の寄与が大きく、「オイルと住宅という二つの特殊なバブル」を抱え込んでいるとも言われる。対照的に生産能力、在庫、人員の「三つの過剰」を解消した日本企業は攻めの経営に転じ、「底堅い内需による景気拡大もあいまって、米国企業に比べ中長期の成長が期待できる」(野村証券の岩沢誠一郎ストラテジスト)という。 -------------------------------------------------------------------------------- 参 投稿者:陀菩酢  投稿日:2005/10/09(日) 08:05:06 容認論者はそろって、新規の個人マネーの流入という需給要因も重視する。長期化する超低金利に加え、今月から郵便局で株式投信の販売が始まったことなどが背景。「二〇〇七年以降、団塊世代が定年退職するのを機に、老後資金が流入すればPERが三十倍近くになってもおかしくはない」との声さえある。  だが、この説には危うさもある。金融機関や事業会社による持ち合いが盛んだったバブル期は五十倍を超えるような、世界的に突出した高PERを正当化するのに、浮動株の少なさが持ち出されていた。PERは本来、企業の成長性に対する評価を反映する尺度。新規マネーによる需給引き締め効果が期待できるにせよ、空前の株式売買規模にうかれて、投資価値判断もバブルに逆戻りするリスクを冒している面はないだろうか。